2態咬合(デュアルバイト)・顎関節症を改善した症例
2態咬合(デュアルバイト)・顎関節症を改善した症例
上の4枚の写真は治療前後の写真ですが、皆さんは違いがお判りでしょうか?
治療前の下顎が7mm位後方に下がっています。治療後は下顎が前方に出てきて口元や顔つき(顎のシワ)が変わったのです。手術なしで顔はこんなに変化します。
【初診時の状態】
こちらの患者さまは、他院にて矯正治療を約 1.5年間行っている状態で当院へご来院されました。来院時には歯列は並んでいましたが、2態咬合( デュアルバイト)のため、下顎は水平方向に約7mm後方へ動き、どこで噛んでいいのか分からない状態でした。
日時(初診) | 2004年5月 |
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年齢・性別 | 46歳 女性 |
主訴 | 矯正装置が当たって痛い(他院にて矯正中)、顎関節症、腰痛他全身的症状 |
主な治療経過 | 2004年5月 初診(他院で矯正中) 2005年8月 当院にて矯正治療を開始 2007年2月 再評価(精密仮歯装着) 2007年10月 被せ物治療終了 メインテナンス開始 2013年3月 5年検査 2018年9月 10年検査 |
治療方針 | ・当院の矯正治療で歯並び・噛み合わせを改善する。 ・2態咬合(デュアルバイト)の治療(前方の位置で噛ませる) ・噛み合わせの再建 ・審美回復 (歯肉ライン修正) |
初診時・治療後・治療後10年の経過について
初診
下顎が前方でも後方でもスライドして噛める「2態咬合(デュアルバイト)」という難しい噛み合わせでした。
治療後
治療後は、下顎が前方に位置しています。後方には前歯と小さい奥歯で入らないようにハンドルが付いています。
治療後10年経過
下顎が前方で定着しています。前歯の山(※下記参照)については、患者様は気になっていないとの事でした。
2態咬合への対応(※2態咬合の治療は難治療の一つである)
▼※精密仮歯内側に山を付け、下顎が後方へ入らないようにしている。
当院の矯正医による約1.5年間の橋正治療後、精密仮歯を装着しました。その際、前歯の精密仮歯3本の内側に山を付け、下顎が前方で保持できるように工夫しました。しばらく試用し、経過を観察致しました。
治療後と治療後10年経過の様子
歯列の変化
・治療前と後で噛み込みは大きく変わっていませんが、顎は三次元的に大きく前後方向に変化しました。
・噛み合わせについては、矯正医のアドバイスを考慮しながら、特殊な装置で決定しました。その際は治療前よりかなり前方の位置に設定しました。奥歯は相手の歯としっかり噛み合っていることが確認できます。
・歯茎が上がっている所には歯茎の移植を行いました。さらに、一番奥の歯については、将来の問題に対応するため、噛む面を金属で修復しました。
・後方向へのハンドルは、上前歯の内側の山と小さい奥歯に付け、上前歯と奥歯は審美性に配慮しセラミック冠を装着しました。上顎も下顎もきれいな歯並びへと改善されました。
治療後10年
・歯並び、噛み合わせに大きな変化はありません。顎の位置は維持され、わずかな歯茎の減少はありますが、歯周病ではなく生理的減少の範囲と考えられます。
・上前歯の山はハンドルの効果が続き、顎が後方に入っていません。左上奥歯がやや内側に入っているため、患者さまの癖が疑われます。
・ややV字歯列になり始めています。下顎も左奥歯が内側になっており、こちらも癖が疑われますが、メインテナンスには好意的なため、顎関節は良好な状態を維持しております。
全身症状
まとめ
前医による矯正治療中にセカンドオピニオンとして来院した患者さまです。初診時は、後方のハンドルがなく、7mm前後平行移動する「2態咬合(デュアルバイト)」という状態でした。また、奥歯の噛み合わせも定まっておらず、顎関節への大きな負担から顎関節症も発症していました。顎は右側にズレている状態でした。
こちらの患者さまの問題点のうち、2態咬合については矯正医からアドバイスを受け、矯正治療が終わって歯の治療に入るにあたり、噛み合わせを精密仮歯で決定しました。また、後方向のハンドルとしては、通常の小さい奥歯と特別に前歯にも付与しました。 経過観察では、前歯の山は睡眠時の噛み合わせの指標として働き、有効との意見を患者さまから得られました。治療後10年経過し、力の問題から歯根破折が生じましたが、噛み合わせは変わらず健康状態は良好です。
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